方今、世界の大勢とわが国の現状を顧みますと、輝かしい文明の陰に、恐るべき憂患が満ち溢れています。
大いなる調和の下に相互の文化の尊厳を維持して繁栄の華開くべきこの地上が、流血の狩場として弧々己が欲望の為に不信と憎悪の念を以って相対し、人智の限りを尽くして創造し得た科学の所産すら、一瞬にして無数の声明を抹殺する劫火(ごうか)と変じ、世界の騒擾(そうじょう)と変化の淵に在って人類は繁栄と滅亡との危機に満ちた岐路に立っております。
我々の祖国も亦例外ではなく、大海の波浪に揉まれる木葉の如く此の世紀の混迷の中に投げ出されております。
戦後八十年余に喃々とする間に、一見華やかな復興と発展の世相の中に民心の荒廃は漸くその色を濃くし、国家百年の大計と現況を打破する施策なく、人は己の向かう所を識(し)らずして眼前の利を追い、国の凡(あら)ゆる分野に禍根は牢乎(ろうこ)として抜き難く、積弊は破綻(はたん)の兆しを明らかにしております。斯くの如くして推移すれば世界も亦我が国も滅亡の道を自ら堕ち行かねばならないでありましょう。
然(しか)し乍(なが)ら、世界と我々とを蔽(おお)う暗雲の生じ来たる所以(ゆえん)のものは、畢竟(ひっきょう)我々自身にその禍因が存在するのであり、我々や子孫の未来を救い得るものが亦我々自身を措(お)いて他には無いものと考えられるのであります。
己の生命を開顕(かいけん)すると共に他の生命を自他平等の立場において尊重し、現実の未熟未完成を充実補足して輝かしい人間社会の未来像を追求し、一歩一歩之を実現して行く事が我々の責務であると信じられるのであります。
わが日本の国体の本質を考え世界平和求道の一石となる覚悟をし、武道教育を通じて礼儀を修め、心身を錬磨し、質実剛健明徳明らかに仁義の名分をよく識(し)り、文武兼ね備えた人格を形成する。
この自覚の上に立ち、不退転の勇氣を以って自らの信念を行じ己を知り、徹して相互に研鑽錬磨して世の為、仁(ひと)の為、未来の為我々の念願と微力とを結集し、国土の一隅より起ち上がって宇宙の混沌を貫き、世界の暗雲を照破する光を点じ世界平和具現の為に邁進するものであります。
茲(ここ)にその結びと行いの場として「一般社団法人 日本護身術普及協会」設立の志を立てるに至りました。この細やかな団結と実践の力が暫時(ざんじ)人類社会未来の曙を志向する大いなる潮流とならん事を信じて、今日只今からその一歩を歩まんとするものであります。
令和七年三月二十日
一般社団法人 日本護身術普及協会